ここまでは出張旅費規程に付随する書類の作成方法と記入方法について解説を加えてきた。
先に付随する各書類の解説を加えてきた理由は、出張旅費規程は一度作成しておくと度々変更する事はないが、他の書類は出張の度に作成する必要があり、使用頻度が高くなる為じゃ。
また、当サイトはこれから旅費規程の作成を初めて行う入門者向きの解説サイトでもある為、各書類の記載方法や役割を理解しておいた方が旅費規程をより活用できるという思いもある。
ではここからは、いよいよ当サイトの本題となる出張旅費規程の作成手順と作成する際のポイントについて解説していくとしよう。
尚、ここで紹介する出張旅費規程は、日本国内における出張に関する旅費規程となっておる。
また本ページ記載の出張旅費規程の雛形はここまで解説をしてきた以下の4つの書類と連動しておるので再度確認が必要な方はチェックしておくことじゃ。
【出張旅費の精算・4つの書類】
@出張申請書
A出張旅費の仮払金申請書・受領書
B出張報告書
C出張旅費精算書
出張旅費規程の作成は節税という目的において作成されるケースも多くある。
しかし、旅費規程を作成し「定額支給」としておくことで精算業務を簡素化できるという経理業務遂行上のメリットがある点も見逃せないポイントじゃ。
尚、出張旅費規程を作成する際に各会社が自社の状況に合わせて設定すべき主な項目は以下の4つじゃ。
@片道距離(出張の種類の項)
A資格区分・等級(交通費の項)
B日帰り日当・宿泊日当(宿泊料および日当の項)
C宿泊料(宿泊料および日当の項)
これから初めて旅費規程を作成する場合は、まず雛形をひと通りチェックしておくと良いじゃろう。
⇒出張旅費規程のひな形(PDF)
⇒出張旅費規程テンプレート(ダウンロード版)
⇒テンプレートご利用に関する確認事項
旅費規程に該当する出張を定義する場合、約9割近くの会社が「勤務地から出張地域までの距離」を元に出張と承認するか否かの判断を下しておると言われておる。
出張の定義に関しては、この他にも出張地域に到着するまでの時間を元にするなど幾つかの方法が存在するが、本ページの出張旅費規程に関してはオーソドックスな「距離」を元に出張の種類を定義しておる。
尚、この出張とみなす距離の決め方は、100kmや150km、また400kmなど各会社ごとに設定する距離が異る為一定の基準というものは存在しない。
また、距離の測定方法としても地図上の直線距離と定める場合や、出張地までの実際の交通ルートの最短距離と定める場合などがある為、この測定基準に関しても各企業ごとの判断で決定する事になる。
尚、一般的に広く用いられている代表的な距離としては交通ルートの最短距離で片道150kmあたりが平均的な相場ラインじゃ。
距離の設定は出張とみなすかどうかの重要な項目となる為、会社の業績なども考慮し慎重に設定することが大切じゃ。
距離の設定を行う際の注意点としては出張距離の設定を100km未満に設定したり500km以上にするなど社会通念上の一般認識から大きく逸脱するような距離の設定は避けるようにすべきという点じゃ。
尚、当サイトのテンプレートの場合、上図の第4条(出張の種類)の黒丸部分を自社で定めた距離に設定する必要がある。
旅費規程では役職(資格区分)ごとに各交通手段の交通費や等級(クラス)に関する支給規定を設定するのが一般的じゃ。
役職の分類としては社長や役員、次長職、部長職、課長職、係長職、課長職、主任職、一般社員などで分類する。
また交通機関としてはJR・鉄道、航空機、船舶、タクシー、バス、自家用車等、出張先までの交通手段や出張先で利用が検討される交通手段について規程を定めておくと良いじゃろう。
尚、当サイトのテンプレートでは上図のように予め役職別の一般的な認識範囲における等級を記載しておるが、例えば航空機の場合、社長や役員だからといってファーストクラス、ビジネスクラスにしなければいけないという訳ではない。
あくまで自社の状況に応じて等級の設定を行うことが大切じゃ。
続いて日帰り日当・宿泊日当の決め方について確認していくとしよう。
この日帰り日当・宿泊日当の設定は各会社ごとに設定金額が大きく異る部分であると言えるじゃろう。
この日当金額の設定を行う際にまず把握しておきたいポイントは、一般的な日当の概念としては出張中の食事代や雑費などの費用が含まれているという点じゃ。
出張時の食事代を実費で精算しても良いが定額支給とする事で経理業務が簡素化される利点は大きい。
また、出張時は普段とは異る環境で仕事を行う事になる。
そのため、いつもならデスクに常備している備品を持ちあわせていなかったり、携帯の充電器を忘れたりなど、急な出張などでは経費として会社に申請しにくいであろう想定外の出費もあるじゃろう。
このような雑費を僅かでも援助する意味合いで日当額を考慮する配慮も大切と言えるかもしれんのぉ。
尚、旅費規程によっては、飲食代に関する設定を別途設けて定額支給を行なっておる場合もあるが、当サイトの雛形に関しては飲食代を含めた日当という位置づけとなっておる。
参考までに良く利用される金額設定としては「日帰り出張の日当は宿泊を伴う出張日当の約半額程度の支給」とする金額設定じゃ。
但し宿泊を伴う出張の日当金額の設定は、国税庁が日当の上限額を公表していない為、判断が難しい部分でもあるじゃろう。
その為、日当を決定する際は、やはりここでも「社会通念上の常識範囲」という見解を意識し日当金額を設定する必要がある。
尚、ここでは初めて旅費規程を作成する方の為に、過去の判例等を元に常識範囲内と判断できる日当の相場ラインについて記載しておく。
もちろんこの金額設定なら税務署にチェックされても必ず大丈夫と断言出来るものではない点については事前に把握しておくべき重要な注意点じゃ。
しかし、会社組織でしっかりと旅費規程を作成しておくことで「否認することもまた難しい設定ライン」であると考える事はできるじゃろう。
役職別の日帰り日当・宿泊日当の相場・目安 | |||
---|---|---|---|
役職 | 日帰り出張の日当 | 宿泊を伴う出張の日当 | |
社長・役員 | 2000円〜3000円 | 4000円〜6000円 | |
部長・次長 | 1500円〜2000円 | 3000円〜4000円 | |
課長・係長 | 1000円〜1500円 | 2000円〜3000円 | |
主任・一般 | 700円〜1000円 | 1500円〜2500円 |
最後に宿泊料の決め方について確認しておこう。
宿泊料の金額設定に関しても残念ながら明確な基準はやはり公開されておらんのが現状じゃ。
その為、宿泊料の金額設定に関しても一般的な相場ラインを元に各会社それぞれが旅費規程の金額設定を行なっていく事になる。
ここでも初めて旅費規程を作成する方の為に、過去の判例を元に常識範囲内と判断できる宿泊料の相場ラインについて記載しておくのでチェックしておくことじゃ。
役職別の宿泊料の相場・目安 | |||
---|---|---|---|
役職 | 宿泊料 | ||
社長・役員 | 12,000円〜16,000円 | ||
部長・次長 | 9,000円〜12,000円 | ||
課長・係長 | 7,000円〜9000円 | ||
主任・一般 | 6,000円〜8000円 |
出張時の出張手当の支給は、個人事業主には認められていない手当金のひとつじゃ。
その為、まだ旅費規程を持たない法人組織を持つ経営者の方は自社の規模を問わず旅費規程の作成について今一度検討しておいて損はないじゃろう。
赤字でも納税義務の生じる法人住民税を収めている以上、法人組織にだけ認められている出張手当を活用しないのはもったいない話でもあるしのぉ。
もちろん過度な節税や社長個人が多額の非課税収入を得る目的で旅費規程を作成し相場から逸脱した高額な宿泊費を設定する等の行為はお勧めしない。
しかし、社員のために日当や宿泊費の一般的な相場を把握し旅費規程導入を検討する。
その中で節税対策のひとつの手段として旅費規程を活用していくことは経営者にとって自然の流れであると言えるじゃろう。